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決算賞与とは?損金算入の3つの要件とメリット・デメリットを解説

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決算賞与とは?損金算入の3つの要件とメリット・デメリットを解説

予想以上に利益が出たため、節税対策として決算賞与を検討しているものの、損金算入の要件が複雑でよくわからないと感じていませんか。
決算賞与とは、企業の業績に応じて支給される特別な賞与であり、正しく手続きを行えば法人税の節税につながる有効な手段です。
しかし、損金算入には厳格な要件があり、一つでも満たせないと当期の経費として認められません。

この記事では、決算賞与の定義から、損金算入を満たす3つの要件、メリット・デメリットまでを網羅的に解説します。
読み終える頃には、自社で支給する際の適切な時期・金額・手続きを判断できる状態になります。

目次

決算賞与とは?通常のボーナスとの違いは?

決算賞与とは、事業年度の決算において、予想以上の利益が出た場合に、その利益を従業員へ還元するために支給される賞与のことです。
一般的に夏・冬に支給される通常のボーナス(賞与)が、あらかじめ就業規則などで支給時期や算定基準が定められているのに対し、決算賞与はあくまで業績に応じた臨時的な支払いという位置づけになります。
そのため、毎年必ず支給されるとは限らず、支給の有無や金額は企業の利益状況によって変動するのが大きな違いです。

決算賞与の基本的な意味と支給される理由
決算賞与が持つ基本的な意味は、事業年度の最終的な利益を原資として、企業の成長に貢献した従業員へ感謝の意を示すことです。
支給される主な理由や目的は2つあります。
一つは、従業員のモチベーション向上です。
会社の業績と自身の報酬が連動することで、従業員のエンゲージメントを高め、さらなる業績向上への意欲を引き出す効果が期待できます。

もう一つの重要な理由は、法人税の節税対策です。
決算賞与として支給した費用は、一定の要件を満たすことで損金(経費)として計上できるため、課税対象となる所得を圧縮し、税負担を軽減する目的で活用されます。

支給時期や金額の決め方はどう違うのか
通常のボーナスが「夏(6~7月)」「冬(12月)」など、多くの企業で支給時期がある程度決まっているのに対し、決算賞与の支給タイミングは文字通り決算期末の前後です。
具体的には、事業年度の利益が確定した決算日以降、株主総会までの間に支給されるのが一般的です。
金額の決め方にも違いがあります。

通常のボーナスは「基本給の〇ヶ月分」といった固定的な算出方法が多いですが、決算賞与は当該年度の利益額に応じて支給総額が変動します。
その総額を、各従業員の貢献度や役職、勤続年数などに応じて配分する算出方法がとられます。

誰が支給対象者になるのか
決算賞与を損金として計上する場合、原則として支給対象者は雇用関係にある全従業員とする必要があります。
正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトといった非正規雇用の従業員も含まれます。
特定の従業員や一部の従業員だけを恣意的に対象者とすると、税務調査で損金算入が認められない可能性があるため注意が必要です。

ただし、就業規則に「支給日に在籍する従業員に限る」といった合理的な基準を設けることは問題ありません。
なお、会社の経営に携わる役員に対して支払われる賞与は、原則として損金に算入できないルールとなっています。

決算賞与を損金算入するにはどうすればいい?

決算賞与を当期の経費として税務上認めさせ、節税効果を得るためには、法人税法で定められた3つの要件をすべて満たさなくてはなりません。
これらの要件は、支給の通知時期、実際の支払時期、そして会計処理の方法について厳密に定められています。
一つでも要件を満たせない場合、その決算賞与は翌期の費用として扱われ、当期の節税にはつながらなくなるため、経理担当者は細心の注意を払って手続きを進める必要があります。

以下で、損金算入のための3つの要件を具体的に解説します。

【要件1】決算日までに全対象者へ支給額を通知する方法
損金算入の第一の要件は、その事業年度の決算日までに、支給対象となる全従業員に対して、それぞれの支給額を個別に通知することです。
通知方法は口頭でも認められていますが、後の税務調査で通知の事実を客観的に証明するために、書面で証拠を残すことが強く推奨されます。
具体的には、各従業員宛に「決算賞与支給通知書」といった書面を作成し、支給日、支給額、支給者(会社名)を明記して交付するのが確実な方法です。

この通知が一部の従業員に漏れていたり、決算日を1日でも過ぎてしまったりすると、要件を満たさないと判断されるリスクがあります。

【要件2】決算日の翌日から1ヶ月以内に全額を支払うルール
第二の要件は、通知した決算賞与を決算日の翌日から1ヶ月以内に、対象となる全従業員へ支払い終えることです。
例えば、3月31日が決算日の会社であれば、翌日の4月1日から起算して、4月30日までに支払いを完了させなければなりません。
この支給日に関するルールは非常に厳格で、万が一支払いが1日でも遅れた場合、その賞与は当期の損金とは認められず、支払った期(翌期)の損金として扱われてしまいます。

そのため、資金繰りの計画を事前に立て、期限内に確実に支払える体制を整えておくことが不可欠です。

【要件3】支給額を未払金として当期中に損金経理する手続き
第三の要件は、通知した決算賞与の額を、支払いが翌期になる場合でも当期の費用として会計処理することです。
具体的には、決算日において、帳簿に賞与の支給額を「未払金」という負債の勘定科目を用いて計上します。
この仕訳を行うことで、実際に現金が会社から出ていくのは翌期であっても、税務上は当期の費用として損金算入時期を確定させることが可能です。

この損金経理を忘れてしまうと、他の要件を満たしていても当期の損金とは認められないため、決算整理仕訳の際に必ず対応する必要があります。

損金算入する際の仕訳例と会計処理の流れ
決算賞与を損金算入する場合、決算時と支給時の2つのタイミングで会計処理が必要です。
まず、決算日に、支給する賞与の総額を費用として計上します。
この際、まだ支払いは完了していないため、相手勘定科目は「未払金」を使用します。
(決算時の仕訳)借方:賞与5,000,000円/貸方:未払金5,000,000円

次に、決算日の翌日から1ヶ月以内に、従業員の口座へ賞与を振り込みます。
この時、計上していた未払金を取り崩す仕訳を行います。
(支給時の仕訳)借方:未払金5,000,000円/貸方:普通預金5,000,000円
この一連の会計処理によって、決算賞与の損金算入が認められます。
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決算賞与を支給するメリット・デメリットは?

決算賞与の支給は、法人税の節税という大きなメリットがある一方で、デメリットも存在します。
導入を検討する際には、税務上の利点だけでなく、企業の財務状況や従業員の心理に与える影響も総合的に考慮することが重要です。
メリットを最大化し、デメリットによるリスクを最小限に抑えるためには、両側面を正しく理解した上で、自社の状況に合わせた慎重な判断が求められます。

これらの要件を満たすことで節税効果が期待できますが、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

法人税の節税効果はどのくらい期待できるのか
決算賞与を支給する最大のメリットは、法人税の節税効果です。
決算賞与は損金に算入できるため、その分だけ会社の課税所得を圧縮できます。
例えば、法人税率が約30%の会社が1,000万円の決算賞与を支給した場合、単純計算で約300万円の法人税額を軽減できることになります。

これは、予想以上に利益が出た年度において、効果的な利益調整および節税対策の手段となります。
ただし、賞与の支給によって社会保険料の会社負担分が増加するため、そのコストも考慮した上で、最終的な節税額をシミュレーションする必要があります。

従業員のモチベーション向上にどう繋がるのか
決算賞与は、企業の業績への貢献が直接的な報酬として従業員に還元される仕組みです。
これにより、従業員は自身の働きが会社の利益に繋がり、それが評価されていると実感できます。
会社の成長と個人の報酬がリンクすることは、仕事に対する当事者意識やエンゲージメントを高め、生産性の向上に繋がります。

また、「利益が出れば社員に還元する」という会社の姿勢を示すことは、従業員の会社に対する信頼感や帰属意識を高める効果も期待でき、組織全体の活性化に貢献します。

会社のキャッシュフローが悪化するリスク
決算賞与の支給は、短期間で多額の現金支出を伴うため、会社のキャッシュフローを悪化させるリスクがあります。
特に、帳簿上は利益が出ていても、売掛金の回収が遅れているなどの理由で手元の現金が不足している「黒字倒産」のリスクがある企業にとっては大きな負担です。
節税目的で多額の決算賞与を支給した結果、運転資金が不足し、その後の事業運営に支障をきたす事態は避けなければなりません。

賞与の支給額を決定する際は、税引後利益だけでなく、現預金の残高や今後の入出金予定を十分に確認し、無理のない範囲で計画することが重要ですす。
「黒字なのにお金がない」という状況については「[会社を絶対に潰さないためのポイント](https://shiodome-tax.jp/financial_260512_2/)」で詳しく紹介しています。

支給できない場合に社員の士気が下がる可能性
一度決算賞与を支給すると、従業員は翌年度以降も「業績が良ければもらえる」と期待を抱くようになります。
しかし、決算賞与は業績連動であるため、業績が悪化した年には不支給、あるいは減額となる可能性があります。
このような、もらえると思っていた賞与がない場合、従業員の期待を裏切る形となり、モチベーションや会社への信頼感が低下する原因となり得ます。

支給する際には、あくまでもその年度限りの特別な賞与であることを事前に十分説明し、恒久的な制度であるとの誤解を与えないような配慮が求められます。

決算賞与にかかる税金や社会保険料は?

決算賞与も、通常の給与や夏・冬のボーナスと同様に、所得税および社会保険料の課税対象となります。
したがって、会社が決定した支給額の全額が従業員の手元に入るわけではなく、税金や保険料が天引きされた後の金額が振り込まれます。
会社側はこれらの計算を正確に行い、源泉徴収および納付する義務があります。

従業員側も、手取り額がいくらになるのかを把握するために、どのような項目がいくら引かれるのかを知っておくことが大切です。
支給する際には、会社だけでなく従業員側にも税金や社会保険料の負担が発生します。

決算賞与から天引きされる所得税の計算方法
決算賞与から源泉徴収される所得税額は、通常の月々の給与とは異なる計算方法を用います。
まず、賞与支給月の「前月」の給与額から社会保険料を控除した金額を算出します。

次に、その金額と扶養親族の人数を、国税庁が公表している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて、賞与にかかる所得税率を求めます。
最後に、決定した税率を決算賞与の額面金額に乗じることで、源泉徴収すべき所得税額が計算できます。

前月の給与額が計算の基準となる点がポイントです。

健康保険料や厚生年金保険料はいくら引かれるのか
決算賞与からは、健康保険料、介護保険料(40歳以上65歳未満の場合)、厚生年金保険料、雇用保険料といった社会保険料も天引きされます。
健康保険料と厚生年金保険料の計算方法は、賞与の額面金額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、それぞれ定められた保険料率を乗じて算出します。

この保険料は、会社と従業員で半分ずつ負担します。
雇用保険料は、賞与の額面金額に雇用保険料率を乗じて計算されます。
これらの保険料率は、加入している健康保険組合や事業の種類によって異なります。

具体的な手取り額のシミュレーション
ここでは、具体的な手取り額をシミュレーションしてみましょう。
前提条件として、東京都在住の30歳、扶養親族なし、前月の社会保険料控除後の給与25万円、決算賞与の額面30万円とします。

1.所得税の計算
税率表から所得税率は6.126%となります。
300,000円×6.126%=18,378円

2.社会保険料の計算(令和6年度の保険料率で計算)
健康保険料:300,000円×9.98%÷2=14,970円
厚生年金保険料:300,000円×18.3%÷2=27,450円
雇用保険料:300,000円×0.6%=1,800円
社会保険料合計:44,220円

3.手取り額の計算
300,000円-18,378円(所得税)-44,220円(社会保険料)=237,402円
このシミュレーションでは、額面30万円の決算賞与の手取り額は約23.7万円となります。

決算賞与の支給でよくある失敗と注意点は?

決算賞与の支給は、節税や従業員のモチベーション向上に繋がる有効な手段ですが、手続きを誤ると損金算入が税務署に否認されるなど、思わぬ失敗を招くことがあります。
特に、損金算入の要件は厳格に解釈されるため、少しの不備が大きな損失に繋がる事例も少なくありません。
ここでは、経営者や経理担当者が陥りがちな失敗例とその注意点を具体的に解説し、トラブルを未然に防ぐためのポイントを提示します。

これらの計算や手続きを正しく行わないと、思わぬ失敗につながるケースがあります。

通知方法の不備で損金算入が認められないケース
損金算入の要件である「決算日までに全従業員へ個別に通知」という点が曖昧だったために、損金算入が否認されるケースはよくある失敗例です。
例えば、役職者だけに支給額を伝え、そこから各従業員に伝達してもらう方法や、全体朝礼で一律に「賞与を出す」と口頭で伝えただけでは、個別に通知した客観的な証拠がありません。

税務調査で指摘されないためには、従業員一人ひとりに対して、支給額や支払日を明記した「賞与支払通知書」を交付し、その控えを会社で保管しておくといった確実な通知方法をとるべきです。

退職予定者への支給はどう判断すべきか
決算日時点では在籍しているものの、賞与支給日までに退職することが決まっている従業員への対応は、慎重な判断が求められます。
この退職予定者を支給対象から外してしまうと、「全従業員に支給」という要件を満たしていないと見なされ、賞与全体の損金算入が否認されるリスクが生じます。
このようなトラブルを避けるためには、あらかじめ就業規則や賃金規程に「賞与は、その支給日に在籍する従業員にのみ支給する」という一文を明記しておくことが有効な対策となります。

この規定があれば、退職予定者を対象外としても合理的な理由として認められやすくなります。

支給の証拠を残すために銀行振込が推奨される理由
決算賞与を支給した事実を客観的に証明するため、支払方法は現金手渡しではなく銀行振込が強く推奨されます。
銀行振込であれば、振込記録が通帳や取引明細に明確に残るため、いつ、誰に、いくら支払ったかという事実を誰もが疑うことなく証明できます。
もし現金手渡しで支給する場合は、従業員一人ひとりから、支給額、受領日、氏名を自署し捺印した領収書を必ず受け取り、保管しておく必要があります。

この証拠書類がないと、税務調査の際に架空の経費計上を疑われる原因となりかねません。

決算賞与に関するよくある質問

決算賞与について、経営者や経理担当者から特にお問い合わせの多い質問とその回答をまとめました。
実務を進める上での疑問点を解消し、よりスムーズな手続きにお役立てください。
これらを踏まえ、最後に決算賞与に関するよくある質問にお答えします。

決算賞与を支給する最適なタイミングはいつですか?
損金算入の要件を満たすためには、決算日の翌日から1ヶ月以内が支給日となります。
会社の利益額が確定する決算日以降に賞与金額を決定し、期限内に支払うのが一般的です。
決算前に支給することも可能ですが、最終的な利益を正確に予測するのは困難なため、利益が確定した決算後のタイミングで支給を判断するのが最も安全で確実な方法です。

決算賞与の支給額はどのように決めるのが一般的ですか?相場はありますか?
決算賞与に法的に定められた金額の決め方や、業界ごとの明確な相場はありません。
一般的には、その年度の経常利益や税引後利益の一定割合を賞与の総原資とし、それを従業員の役職や人事評価、勤続年数といった貢献度に応じて配分する算出方法が用いられます。
いくら支給するかは、あくまで会社の利益状況と内部の規定によって決まります。

決算賞与を一部の従業員にだけ支給しても問題ないのでしょうか?
損金算入を前提とする場合、決算賞与を一部の従業員にだけ支給することは原則として認められません。
役員の親族や特定の幹部など、恣意的に選ばれた対象者への支給は、利益操作と見なされ損金算入が否認される可能性が非常に高いです。
ただし、客観的で合理的な評価基準に基づいて査定を行い、その結果として支給額に差がつくことや、一部の従業員がゼロ査定となること自体は問題ありません。

Summary

決算賞与とは、企業の年度末の利益を従業員に還元する臨時的な賞与であり、節税と従業員のモチベーション向上の両面で大きなメリットがあります。
しかし、その節税効果を享受するためには、「決算日までの個別通知」「決算日の翌日から1ヶ月以内の支払い」「当期中の損金経理」という3つの厳格な要件をすべて満たさなければなりません。
また、キャッシュフローの悪化リスクや、通知方法の不備といった注意点も存在します。

これらの要件と注意点を正しく理解し、計画的に制度を運用することが、決算賞与を成功させる鍵となります。
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