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短期賃貸借契約とは?

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短期賃貸借契約とは? 3年・5年の短期契約、旧制度の保護廃止、競売時の扱いまで徹底解説

はじめに:短期賃貸借は「今も有効」だが、旧制度とは全く違う

「短期賃貸借契約」と聞くと、

  • 「競売されても守られる」
  • 「6か月は住み続けられる」
    といった古い説明がネットに残っています。

しかし、平成16年(2004年)の民法改正で制度は大きく変わりました
現在は「短期賃貸借契約」=土地は5年以内、建物は3年以内の契約(民法602条)を指すものの、競売時の保護制度(旧・短期賃貸借保護制度)は廃止済みです。

そのため、

  • 「短期契約」を活用するなら通常の賃貸借契約のひとつとして理解する
  • 「競売で守られる」幻想に惑わされない
  • 契約期間・更新・明渡猶予のルールを最新法で押さえる

これが賃貸経営を誤らないコツです。

目次

1. 短期賃貸借契約の基本(民法602条)

民法602条はこう定めています。

土地の賃貸借:存続期間は最長50年
建物の賃貸借:存続期間は最長30年
短期賃貸借契約:土地は5年以内、建物は3年以内の契約であっても有効

つまり、短期=無効ではない
「1年だけ貸したい」「2年だけ部屋を使わせたい」という契約も有効です。

ここで重要なのは:

  • 普通借家契約としても短期は結べる
  • 定期借家契約としても短期設定は可能

という点。
つまり、**短期契約=制度ではなく“期間の設定”**に過ぎません。

旧・短期賃貸借保護制度とは?(平成16年廃止)

かつては「短期賃貸借保護制度」がありました。

  • 抵当権が設定された後に短期賃貸借契約を結び、引渡しを受けていれば、競売されても契約期間満了まで住める、という借主保護制度です。
  • これは「短期賃貸借だから守られる」という特典でした。

しかし、

  • 金融機関や競落人(買受人)にとって不利益が大きすぎる
  • 不良債権処理や競売流通に支障をきたす

という理由から、2004年4月1日(平成16年改正)に廃止されました。

改正後の現在ルール

3-1 抵当権設定後の短期契約

  • 抵当権設定後に結んだ短期賃貸借契約は、競売買受人に対抗できません。
  • 所有権が移転した時点で、賃借権は消えます。

3-2 明渡猶予6か月ルール

ただし、借主保護のため、引渡猶予6か月が認められています。
つまり、競売で所有権が移った後、6か月間だけは退去を猶予される
→ 6か月を過ぎれば退去義務が発生。

3-3 所有者変更後の扱い

  • 抵当権設定前に結ばれた賃貸借契約は、新所有者にも対抗可能。
  • 抵当権設定後なら対抗不可(6か月猶予のみ)
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短期借家権を主張できる場合/できない場合

主張できる場合

  • 抵当権設定前に契約・引渡しが完了している
  • 契約期間内であれば、新所有者にも「そのまま住み続けられる」

主張できない場合

  • 抵当権設定後に契約した場合
  • 競売で所有権が移転した場合は6か月猶予のみ
  • 猶予期間終了後は退去義務あり

オーナー目線:短期賃貸借を選ぶメリット・デメリット

メリット

  • 「転勤中の3年だけ貸す」「建替えまでの2年だけ貸す」といった期間限定活用に最適
  • 借主も「期間限定だからこそ借りたい」層が存在(駐在員・留学生・プロジェクト勤務)
  • 定期借家と組み合わせると、出口を確実にコントロール可能

デメリット/注意

  • 普通借家の短期契約だと、実質は「更新あり」と解釈される場合もあり、出口リスクが残る
  • 競売リスクがある物件では、借主の権利が弱い=トラブル要因
  • 募集時に「短期=割高」「短期=家具付き」など付加価値を付けないと決まりにくい

競売・差押えと短期契約の実務フロー

  1. 競売開始決定通知が出る
  2. 抵当権設定後の短期契約は競落人に対抗不可
  3. 新所有者へ移転
  4. 借主は6か月猶予期間内に退去準備
  5. 猶予経過後、退去義務確定

オーナー側は、募集時点で抵当権の有無を説明しておかないとトラブルになります。

契約条項サンプル/通知文例

短期賃貸借契約・条項例

  • (契約期間)本契約は令和○年○月○日から令和○年○月○日までの3年間とする。
  • (終了)期間満了により契約は当然に終了する。更新はしない。
  • (抵当権設定後)本物件に抵当権が設定された後に競売となった場合、借主は民法395条に基づき6か月間の猶予後に退去する。

明渡し通知文例

賃借人 ○○様
本物件は競売により所有権が移転しました。民法395条により、6か月間の明渡猶予期間の後、○年○月○日までにご退去ください。

よくある誤解と注意点

× 誤解1:短期契約なら必ず競売でも住み続けられる
旧制度(2004年以前)の話。現在は6か月猶予のみ。

× 誤解2:短期契約は更新できない
普通借家の短期契約なら、更新可能(実務では継続居住多し)。定期借家の短期なら更新なし。

× 誤解3:短期=家賃安い
→ 実際は逆で、短期契約=割高設定家具付き・光熱費込が一般的。

  1. チェックリスト

締結前

  • 目的を確認(建替え/転勤/売却準備)
  • 抵当権の有無を確認・説明
  • 「更新なし」かどうかを明記

期間中

  • 退去時の原状回復基準を明記
  • 短期契約特有の条件(家具家電・光熱費)を整理

競売リスク時

  • 借主に「6か月猶予のみ」説明
  • 明渡スケジュールを早めに調整

Summary

短期契約=便利だが、旧制度の幻想に注意

  • 短期賃貸借契約は有効(土地5年以内/建物3年以内)。
  • 短期賃貸借保護制度は廃止済み。競売後は6か月猶予のみ
  • オーナーは出口戦略に短期契約を活用できるが、形式の整備と説明責任を怠るとトラブル必至。
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