―― 成長企業が陥る“黒字なのに苦しい”状態の正体
「過去最高売上です。」
それでも、通帳残高は増えていない。
むしろ資金繰りはタイトになっている。
これは成長企業で非常に多い現象です。
売上成長=資金増加ではない
本当の問題は、利益ではなく
キャッシュフローの構造にあります。
―― 売上拡大が利益を削ることもある
スケール期に起きやすいのが、粗利率の低下です。
■ よくあるパターン
・値引きで受注を拡大
・原価管理が追いつかない
・外注比率増加
・人件費先行投資
売上は伸びるが、
1件あたりの利益は減少している。
例えば:
売上1億円 × 粗利率40% = 粗利4,000万円
売上1.5億円 × 粗利率30% = 粗利4,500万円
売上は50%増でも、
粗利はわずか12.5%増。
ここに固定費増加が加わると、
実質的なキャッシュ創出力は低下します。
■ 見るべきは「売上」ではなく「粗利総額」
・部門別粗利
・商品別採算
・案件別利益率
スケール期こそ、
構造の可視化が必要です。
―― 成長は“先にお金が出ていく”
売上拡大と同時に増えるもの。
それが、
・在庫
・売掛金
です。
■ 売掛金増加の影響
売上1億円
回収サイト60日
→ 常に約1,700万円が未回収状態
売上2億円になると、
→ 未回収は約3,300万円
つまり、
成長するほど、資金が固定される
これが資金繰り悪化の典型パターンです。
■ 在庫増加の落とし穴
・売上予測過大
・仕入先ロット増加
・新商品展開
在庫は帳簿上は資産ですが、
現金ではありません。
売れなければ、
キャッシュを生まない“凍結資金”です。
―― 利益とお金は一致しない
キャッシュフローは3つに分かれます。
① 営業CF
② 投資CF
③ 財務CF
成長期に問題になるのは営業CFです。
■ 黒字なのに営業CFがマイナスになる理由
・売掛金増加
・在庫増加
・前払費用増加
損益計算書では利益が出ている。
しかし、
貸借対照表では資金が外に出ている。
これが、
「黒字倒産」の構造
です。
成長企業が見るべき3つの指標
売上ではなく、
✔ 粗利率
✔ 運転資本(売掛金+在庫−買掛金)
✔ 営業キャッシュフロー
この3つを毎月確認すること。
■ 解決策の方向性
・値引き戦略の見直し
・回収サイト短縮交渉
・在庫回転率改善
・部門別損益管理導入
・資金繰り表の月次運用
成長企業に必要なのは、
「攻めの営業」+「守りの財務」
です。
売上拡大は成功の証ではありません。
キャッシュを生む構造こそが、本当の成長です。
汐留税理士事務所では、
月次決算体制の整備から部門別管理、資金繰り改善まで、
スケール期の財務戦略を総合的に支援しています。