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令和7年「所得税・源泉徴収」歴史的大改正の全貌と、企業が取るべき給与計算・経理

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令和7年「所得税・源泉徴収」歴史的大改正の全貌と、企業が取るべき給与計算・経理

令和7年に起きた「税制の歴史的転換」と実務への影響

令和7年(2025年)、日本の所得税制は過去に類を見ない歴史的な大改正を迎えました。メディア等で「103万円の壁が160万円に引き上げられた」と大きく報じられたため、経営者や人事労務・経理担当者の皆様にとっても記憶に新しいことと思います。

しかし、税制が改正されたからといって、すぐに月々の給与計算(源泉徴収)が変わるわけではありませんでした。実務の現場では、「令和7年4月に遡及して適用された変更」と、「年末調整で精算された変更」、そして「令和8年1月からの月々の源泉徴収に反映された変更」が複雑に絡み合い、給与担当者を大いに悩ませる要因となりました。

本稿では、税理士の視点から、令和7年4月を起点とした源泉徴収・所得税関連の変更点を整理し、企業が現在(令和8年)そして今後どのように実務を回していくべきか、徹底的に解説いたします。顧問先企業の皆様の社内マニュアルや、経理部門の振り返り・確認用資料としてご活用ください。

目次

第1章:令和7年4月1日に遡及適用!「通勤手当の非課税限度額」の引き上げ

令和7年の源泉徴収実務において、月々の給与計算に最も直接的かつイレギュラーな影響を与えたのが、「マイカー・自転車通勤者の通勤手当の非課税限度額の引き上げ」です。

1-1. なぜ限度額が引き上げられたのか?

近年、急激なインフレや原油価格の高騰により、ガソリン代が著しく上昇しました。これに伴い、マイカーやバイクで通勤する従業員の交通費負担が増大していましたが、従来の非課税限度額(税金がかからない通勤手当の上限)は長らく据え置かれていました。この実態と税制の乖離を是正するため、令和7年度税制改正において限度額の大幅な引き上げが決定されました。

1-2. 対象となる従業員と新しい限度額

この改正の恩恵を受けるのは、自動車、バイク、自転車などの「交通用具」を使用して通勤している人で、片道の通勤距離が「10km以上」の従業員です。電車やバスなどの公共交通機関のみを利用している人(月額15万円が上限)や、片道10km未満のマイカー通勤者については、変更はありません。

改正後の新しい非課税限度額(月額)は以下の通りです。

片道の通勤距離 改正前(旧限度額) 改正後(新限度額)
2km未満 全額課税(変更なし) 全額課税(変更なし)
2km以上~10km未満 4,200円 4,200円(変更なし)
10km以上~15km未満 7,100円 7,300円
15km以上~25km未満 12,900円 13,500円
25km以上~35km未満 18,700円 19,700円
35km以上~45km未満 24,400円 25,900円
45km以上~55km未満 28,000円 32,300円
55km以上 31,600円 38,700円

1-3. 実務担当者を悩ませた「遡及適用」と年末調整での精算

この通勤手当の改正において、実務担当者が最も注意を払ったのが「適用のタイミング」です。

関連法令が施行されたのは令和7年11月でしたが、効力は「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」に遡って適用されました。

つまり、企業は4月から11月までの間、従業員に対して「旧限度額」に基づいて源泉徴収を行っていたことになります。結果として、本来は非課税であるはずの通勤手当の一部に税金がかかり、所得税を「多めに徴収(過納)」していた状態が発生しました。

この過納分については、過去の給与計算を毎月分やり直すのではなく、令和7年12月の年末調整において、新限度額に基づいて再計算し、還付金としてまとめて精算するというイレギュラーな処理が行われました。経理担当者は、従業員ごとの通勤距離と4月以降に支給した通勤手当の額を再確認し、年末調整ソフトに正しい非課税額を入力するという対応に追われました。

第2章:社会の前提を覆した歴史的大改正「160万円の壁」の全貌

通勤手当の変更に加えて、令和7年度税制改正の最大の目玉となったのが、所得税の「基礎控除」と「給与所得控除」の大幅な引き上げです。これが結果として、長年日本社会の働き方を縛ってきた「103万円の壁」を打ち破ることになりました。

2-1. 基礎控除の引き上げ(最大95万円へ)

基礎控除とは、すべての納税者が無条件で所得から差し引くことができる控除です。これまで一律48万円(高所得者を除く)でしたが、低所得者層や中間層の税負担を劇的に軽減するため、合計所得金額に応じて控除額が大幅に拡充されました。

  • 基本額のベースアップ: 48万円から58万円へ引き上げ。
  • 低所得者への特例加算: 合計所得金額が132万円以下の場合、さらに37万円が特例として加算され、基礎控除が最大「95万円」となりました。

2-2. 給与所得控除の最低保障額の引き上げ(最低65万円へ)

給与所得控除とは、会社員やパートにとっての「みなし経費」として収入から差し引ける枠です。この最低保障額が、従来の55万円から65万円へと引き上げられました。

2-3. 「160万円の壁」誕生のメカニズム

パートタイム労働者や学生アルバイトを想定した場合、所得税がかかり始める(課税所得が発生する)ラインは、以下の計算式で決まります。

  • 【旧制度(令和6年まで)】 基礎控除48万円 + 給与所得控除55万円 = 103万円
  • 【新制度(令和7年以降)】 基礎控除95万円 + 給与所得控除65万円 = 160万円

これにより、年収160万円までは所得税が一切かからなくなりました。長年問題視されてきた「税金を払いたくないから年末にシフトを減らす(就業調整)」という心理的・経済的ハードルが大きく下がり、より長く、安心して働ける環境が整ったのです。

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第3章:【重要】月々の源泉徴収額は「いつ」から変わったのか?

ここが給与計算実務において最も誤解されやすく、従業員からの問い合わせが殺到したポイントです。「103万円の壁が160万円になったのだから、令和7年4月から毎月の給与天引き(源泉徴収)も減ったのでは?」と考える方が多くいらっしゃいました。

しかし、結論から言うと、令和7年中の毎月の源泉徴収額(所得税の天引き額)には、この大改正は一切反映されていませんでした。

3-1. 令和7年11月までの源泉徴収事務は「変更なし」

国税庁の通達により、基礎控除や給与所得控除の引き上げといった税制改正は「令和7年分の所得税から適用」されるものの、年度の途中で月々の源泉徴収事務を変更することによる企業の混乱を避けるため、令和7年11月までの給与計算には「旧制度の源泉徴収税額表」をそのまま使用する措置が取られました。

3-2. 令和7年12月の「年末調整」で一括大精算(大還付)

では、実質的に減税された分の税金はどう処理されたのでしょうか。それはすべて、令和7年12月の年末調整で一括して還付(精算)されました。

令和7年の年末調整は、基礎控除額が最大95万円に増え、給与所得控除も増えた状態で年間の正しい所得税が計算されたため、例年の年末調整と比較して、多くの従業員に「多額の還付金」が戻るという結果になりました。「今年の年末調整はやけに戻ってくる金額が多いけれど、会社の計算間違いではないか?」といった問い合わせを受けた人事担当者も多かったはずです。

3-3. 令和8年1月給与から「新・源泉徴収税額表」がスタート

月々の給与からの天引き額が正式に新制度に対応したのは、年が明けた令和8年(2026年)1月支給分の給与からです。

現在皆さまが使用している給与計算ソフトは、すでに基礎控除等の引き上げを反映した「新しい源泉徴収税額表」に基づいてアップデートされています。そのため、令和8年に入ってからは、従業員の毎月の手取り額が(旧年と比較して)ベースアップしていることになります。

第4章:「特定親族特別控除」の創設と実務への影響

令和7年の税制改正では、「特定親族特別控除」という新しい制度も創設され、源泉徴収・年末調整の実務に新たな確認作業を追加しました。

4-1. 制度の目的と対象者

この制度は、教育費の負担が最も重くなる「19歳から22歳まで」の大学生年代の子どもを持つ親の税負担を軽減するために設けられました。従来の「特定扶養控除」と併用・上乗せして利用できる強力な控除枠です。

4-2. 給与計算担当者の実務対応

この控除を正しく適用するためには、毎年の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」において、従業員からの正確な申告が必要です。実務担当者は、以下の点を確認するフローを新たに追加しました。

  • 対象となる親族の年齢が、当年12月31日時点で19歳以上23歳未満であるか。
  • 対象となる親族の合計所得金額が要件を満たしているか(アルバイトをしすぎて扶養から外れていないか)。

ここで注意すべき「新たなジレンマ」が発生しています。大学生の子ども自身が前述の「160万円の壁」まで非課税で働けるようになった反面、子どもが年間160万円まで稼いでしまうと、親の側でこの「特定親族特別控除」や「扶養控除」の適用対象外となり、世帯全体での税負担が跳ね上がってしまうのです。給与担当者は、従業員からの「子どもはいくらまでバイトしていいのか?」という相談に対し、世帯全体の税金バランスを考慮して的確に答える知識が求められるようになりました。

第5章:経営者・人事担当者が今すぐ見直すべき社内制度と経営戦略

ここまで解説してきた令和7年4月起点の税制大改正は、単なる経理上の計算ルールの変更にとどまらず、企業の人事戦略や社内制度の抜本的な見直しを迫るものでした。そしてそれは、令和8年となった現在進行形で対応が求められている課題です。

5-1. 「配偶者手当・家族手当」の支給基準の緊急見直し

多くの日本企業では、配偶者手当や家族手当の支給基準を、旧税制の「配偶者の年収103万円以下」に合わせて設定していました。

しかし、税法上の非課税枠が160万円に引き上げられた現在、社内規程の「103万円以下」という文言を放置しておくと、極めて大きな矛盾と不満が生じます。

  • 「税法上は160万円まで働けるのに、会社の手当をもらうために配偶者が103万円で働き控えている」
  • 「会社の手当の基準を160万円に引き上げるべきか、あるいは手当自体を廃止して全従業員の基本給に組み込むべきか」

経営層は、自社の就業規則や賃金規程を見直し、時代の変化と新たな税制に合わせた制度設計を早急に行う必要があります。

5-2. パート・アルバイト人材の活用戦略(人手不足の解消)

年収の壁が160万円に引き上げられたことは、パートタイム労働者を多く抱える小売業、飲食業、サービス業などの経営者にとって「強力な追い風」です。

これまで年末の繁忙期に「103万円を超えるから出勤できない」と言っていた優秀なスタッフに対し、堂々とシフト増を打診できるようになりました。最低賃金が上昇を続ける中、既存スタッフの労働時間を延ばすことで、新たな採用コストや教育コストをかけずに人手不足を解消する戦略が格段に立てやすくなっています。

5-3. 給与計算システムの完全移行と定期監査

令和7年の過渡期を経て、令和8年の現在は完全に「新制度下での源泉徴収」が稼働しています。しかし、クラウド型の自動アップデート対応の給与計算ソフトを使用しておらず、オンプレミス型(インストール型)やエクセル等で独自に計算を行っている企業におかれましては、令和8年版の源泉徴収税額表や新しい非課税限度額が正しくマスター登録されているか、改めて徹底した監査をお願いいたします。

ここで税額の計算を誤ると、年末調整時に大規模な修正計算が発生し、従業員への追徴や企業の信頼失墜に直結する恐れがあります。

Summary

税制改正を「経営のチャンス」に変えるために

令和7年に施行・遡及適用された所得税および源泉徴収に関する大改正は、経理・給与計算の現場に一時的な混乱をもたらしましたが、同時に「従業員の手取りを増やし、労働参加を強く促す」という極めてポジティブな効果を持つものです。

月々の源泉徴収という「作業」をミスなくこなすことは大前提ですが、経営者や人事担当者の皆様には、この税制改正の背景を深く理解し、「手当の見直し」や「パート人材の積極活用」といった一歩進んだ経営戦略へと結びつけていただきたいと願っております。

【当事務所からのご案内】

給与計算ソフトの税率設定チェック、複雑化した扶養控除申告書のダブルチェック、ならびに「新しい年収の壁(160万円)」に対応した賃金規程・家族手当の見直しコンサルティングにつきましては、当税理士事務所にてフルサポートを提供しております。

令和7年4月からの通勤手当の非課税枠の遡及計算に不安が残っている、または令和8年以降の税金計算に疑問があるご担当者様は、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。正確な実務処理と戦略的なアドバイスで、皆様の企業経営を力強くバックアップいたします。

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